「ロスト・ケア」読破

葉真中顕氏の著書「ロストケア」を読み終えました。これはなかなか考えさせられる物語でした。

老人介護をめぐり、様々な人間が様々な思いに突き動かされて生活しています。ある人間は「オレオレ詐欺」に手を染めたり、その友人は検察官で罪人を裁いていたり、そして最後にその検察官が対峙する大物が、40人以上もの人を殺した罪に問われた男でした。その男が40人以上もの人間を裁いていた理由は、「楽にしてあげたかった」、ということです。介護は介護する側もされる側も大きなストレスをこうむります。そのせいで家庭が崩壊していったり家庭内暴力や殺人にまで発展していく家庭も珍しくありません。そんな彼らを少しでも解放しようと、かつて自分も父親を介護していた介護士が、注射による比較的安楽死に近い状態の殺人を繰り返していました。殺人は重い罪で、殺人犯は裁かれなくてはならない。しかし実際に、父や母を介護していた子供からすると、「死んでくれてありがとう」という気持ちが大きいのは否めません。ですから、その殺人犯は、自分のしていることが神々しいことだと思っていて、捕まっても尚「自分は悪くありません」という姿勢を貫きました。そして、そんな信念に戸惑う検察側の心境、これもまた複雑で彼のことをちょっとは許してしまう部分もあったりして、そういう些細な介護でのやり取りを垣間見た気がします。

この後日本は超高齢化社会を迎えます。だからこのような現実は他人事ではないし、現に今うちの父は在宅介護を受けています。うちは母や姉が交代で世話をして時々私や妹も行くのでさほど悲劇的な状態ではありませんが、周りに頼る人もいなく、一人孤独に介護生活に耐える人も大勢いることもわかっています。自分たちはラッキーだったけど、大抵の人は苦しんでいるんだという現実に、私たちは本来ならもっと真剣に向き合わなくちゃいけないんだ、と反省させられました。このお話はあくまで連続殺人の話なのですが、介護問題に焦点を当てたという意味でも印象的な作品でした。

さて、次に読み始めたのは、真保裕一さんの著書「ブルー・ゴールド」です。今度は打って変わって企業サスペンスです。真保さんは大好きな作家さんで、ドラマ化や映画化されている、外交官黒田康作シリーズも読破しています。何年ぶりにこの作家さんの本を手にとったことか・・・・本当に久々なので、本当にわくわくしています。

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