「眠る絵」読破

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佐伯泰英氏の著書「眠る絵」を読み終えました。

最後は結構あっという間にまとめて読んでしまった気がします。

物語は戦時中にまで遡り、当時スペインの名画コレクションを買い漁っていた外交官の孫が後に事件に巻き込まれていく、という話です。そこにはジャーナリストの菊村も深く関与し、やがて外交官の孫と菊村は恋人同士になり、スペインの地で命を狙われながらも真実にたどり着いていきます。私は最近南米の話などを読んだ関係で、スペインの歴史に触れる機会が多かったように思います。今回は、戦後暫くスペインを統治していた軍人フランコが大きく関わってきました。私はフランコ政権については殆ど興味を持ったことはありませんが、フランコの死後王政復古をし、現在は再び国王が国家元首になっていることくらいは知っています。元々王家が国を統治していたのに、どのようにしてフランコがのし上がってきたのかは全く知りませんでした。しかし、そうしたことが外交官であった木滑には深く関係しています。歴史の部分は、なかなか理解できなかった。しかし、大量に名画を収集した人物の壮大な人生、また絵画を巡る人々全ての壮絶な戦いを間近で見たような気がして、気持ちがどんどん大きくなっていきました。優れた冒険小説というのは、どれだけ殺人事件が絡んでいても、人の心を大きく揺さぶるものです。私はスペインに2回行ったことがありますが、改めてまたスペインという国を訪問し、見逃してきたことを見てきたいと思いました。この小説は、本当に素晴らしかったです。

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そして、私は次にオウム真理教教祖だった松本智津夫死刑囚の三女が書いた本を読む予定でいたことをすっかり忘れ、堂場瞬一氏の著書「相剋」を選んでいました(^^;

まいっか、こちらはなかなか進みません。仕事で疲れて、3ページくらいで挫折してしまいます。物語が進めばまた面白くなってきて、イヤでも読む気になってくるでしょうけどね、まぁ続きを楽しみにしています。

「止まった時計」購入

20150324_220409私が珍しく購入した、自伝です。

オウム真理教教祖の松本智津夫死刑囚の3女、「アーチャリー」の名前で呼ばれていた、松本麗華さんの著書「止まった時計」です。

オウム事件を知らない世代がどんどん増えてきていますね。私は、この事件はよく覚えているんです。東京にも数箇所オウムの道場があって、私はそのかなり大きな道場の近くに住んでいました。スーパーにはオウム信者が買い物に来ているのも見ました。またそれだけではなく、私は青山総本部があった場所に、母らとドライブにも行った(^^;) 地下鉄サリン事件には友達が巻き込まれていた可能性があり、電話で連絡を取ってみたりして本当に心配しましたが、幸い丸の内線を使っている友人は無事で・・・どれだけホっとしたことか。あの事件の被害者数は6,000人、その中に私の知り合いが一人でも含まれていてもおかしくなかったのです。

テレビでは初めて人が殺されるところを見ました。私は青山総本部からの生中継を見ていて、村井秀夫幹部が刺殺されたのです。あの映像を見ていたとき、最初は何が起こったのかわかりませんでした。でも、殺人事件が起きたと知って、本当にびっくりでした。後にも先にも殺害現場を生で(テレビを介してではありますが)見たのはあれだけだったので、もしあの画像が全く乱れていなくて殺害の一部始終をうっかり見ていたら、PTSDになっていたかもしれませんね。殺人事件を目撃した人にPTSDは多く見られる症状です。

とまぁ、私のオウムの思い出話は尽きませんが・・・あの事件が社会現象にまでなり、私は元教団幹部が書いた本などを片っ端から読みました。教団広報部長であった上祐氏の本も読みましたし、松本智津夫死刑囚の四女、松本聡香さんの著書も読みました。その中で、何故今まじめに生きる彼らが、あんな事件を起こしてしまったんだろう、何故松本家の人たちに不幸な境遇が待っていたのだろうかと、何度も考えました。

アーチャリーは、教祖から最も寵愛を受けていた子供です。私は事件が起きた当時、太った少女がテレビに映るたびに「この子はろくな子じゃないだろうな」と思ったものです。だって、教団という場所しか知らないわけだし、小さい頃からちやほやされていたら、我侭な子になるのが当然ってものでしょう。しかし、教団の起こした事件により、松本家はバラバラになりました。

今年でオウムが起こした地下鉄サリン事件から丸20年、その節目の年に、教団内で最も目立っていた子供、アーチャリーこと松本麗華さんがその半生を綴ったことを知り、読まなくてはと思いました。その前に四女の本も読んでいましたが、現在三女と四女では意見が対立していて、疎遠になっているようです。

私は麗華さんも聡香さんも、松本智津夫の娘というだけで、相当辛い人生を送ってきたんだろうなぁと思いました。彼らが事件を起こしたわけではないのに、加害者の家族というのは常に加害者という目線で見られてしまいます。けど、彼らには彼らの人生があっていいと私は思うし、事件に向き合って生きていれば、それ以外はどんな夢でもかなえる権利があると思います。三女麗華さんはインタビューにも答えていましたが、自分の中で事件を消化しきれていないようでした。そして、聡香さんとも真っ向から対立している。

私は聡香さんの著書を読んだのなら、麗華さんの著書も読まないと、松本家の子どもたちを平等に見られないのではないかと思いました。それが、本を購入した理由でしょうかね・・・そして、私は特に被害者遺族ではないので、客観的にあの事件を見てみたいと思います。

今はまた例によって冒険サスペンスを読んでいるところです。それが終わったら、多分すぐに麗華さんの著書を読むことになると思います。なかなか楽しみです。

「凍花」読破

20150303_001553前回ここに、次は今野敏氏の「闇の争覇」を読むと書いたのですが、書いた直後に気が変わって(^^;)、斉木香津氏の著書「凍花」を読むことにしたんです。斉木氏の著書を読むのは初めてでした。何故あの時急に心変わりしたかっていうと・・・よくわかりません。今野氏の著書はシリーズもので、最初からある程度登場人物がわかっていました。けれど、この著書に関しては何もわからない。アマゾンであらすじを読んだこと以外、私には情報がありません。それが逆に、「たまにはまっさらな気持ちで新しいもの読もうかな」という方向に繋がったんです。

なかなか興味深いお話でした。さほど躍動感があるわけでもないし、ただ淡々と事実整理が続くような話。仲良し三人姉妹の長女が次女を殺害。何故そのような事件が起きたのか、三女が事件の謎を解明20150303_002219していくという話です。三人姉妹というのが興味をそそられるポイントだったかも。私が三人姉妹だからです。私は次女。そして、うちもみんな仲良しです。

この事件の核となるのは、長女が持つ性格の二面性です。家族に見せていた顔と外で見せていた顔が全く違う。本人は自己統一を図りたいけど、どうもそれがうまくいかず、二面性を使い分けながら生きることに疲れていくんです。家では常にいい姉でいるように振る舞い、外ではちょっと横柄に振舞う癖がある。本当はみんなと仲良くしたいのに、誰も自分のことなんて見向きもしないと思い込み、孤立感を深めた挙句に発作的に殺人を犯してしまいます。

ここまで書くと、単なるネタバレになってしまうのですが・・・だって、長女は黙秘していて、三女も長女が持つ二面性にまだ気づいていないところから物語は始まっていくのですから。でもそれはさておき、長女の苦しみは少しはわかるような気がしました。自分もかつてはそうだったかもしれない。けど今は逆に、表裏がなさすぎて、誰もが私のことを見透かしているような気がして怖いのかも(苦笑)。外で粋がっていた時代はありましたし、それはそれで自分としては窮屈でした。人生の舵取りの仕方がわからない10代のころなら、誰だってそうでしょう。問題は、大人になっても自我が発達していないことだと思います。それがどんな結果を生むのか、この小説をもって学んだ気がします。

でも、この手の小説を今後も読みたいかといわれたら、そうではありません。私はもっとスピード感溢れるストーリー、壮大なドラマが読みたいのです。ですから、次に読む本は、佐伯泰英氏の著書「眠る絵」にしました。これは、警視庁が舞台となるお話です。この本はまだ読んでいませんが、今晩から読んでいくのを本当に楽しみにしています。