佐伯泰英氏の著書「ピカソ 青の時代の殺人」を読み終えました。
この本では、ピカソのことを本当によく知ることができました。ただ、何が真実で何が付け足したフィクションなのか、わからなくなってきましたけどね。佐伯さんはスペインを舞台にしたら、何でも本当にリアルに書いてしまうから、驚きです。物語は、ピカソに作風が酷似する画家の作品とピカソの作品を巡って殺人事件が起こり、舞台は東京、パリ、バルセロナと転々とします。バルセロナ五輪が開催されるまで、バルセロナを擁するカタルーニャは凄く特殊な場所として捉えられていたことがよくわかります。今ではバルセロナをスペインの大都市としか位置づけない人も多いと思いますが、確かにあそこだけはナショナリズムの意識がとても高いところです。結局犯人は、バルセロナの大富豪にして精神を病んだ実業家だったのですが、一度絵に取り憑かれると、人は尋常ではいられなくなるのかも知れません。実際に多くの画家が精神状態を乱したし、崇高なもの、究極の美しさを求めるものにとって、その世界にとことんはまれば、精神を蝕まれるということはあるのだと思います。今回はそんな人間の起こした狂気の殺人が発端となり、普通の刑事がバルセロナ出張までして事件を解決しました。全体的にテンポよくきて、やはり途中からもう夢中になって読んだのですが、最後のオチでちょっとね・・・犯人の一人が小児性愛者の男性、というところまではよかったけど、整形で胸にシリコンは入れたけど男性性器はそのままっていう女性になっていたというのには無理があったように思います。物語で一人の男性をそこまで変える必要はなかったかなぁというのが私の意見です。
佐伯さんの作品は、最後で惜しいと思うことが何度かありました。全体を通して作品の質は本当に素晴らしいのに、最後がオチきれていない、という感じ。それがなければ、この物語は完璧になっていただろうに、と思います。
次に私が読むことにしたのは・・・結局今本のストックが結構できてしまったわけですが・・・麻見和史氏の「屑の刃 重犯罪取材班・早乙女綾香」にしました。一度にまとめ買いをしておいた中で、麻見氏の作品だけ2冊買っていたので、まず一冊読んでしまおう、と思ったのです。昨日2ページくらい読んで、すぐに眠りに落ちてしまいました。今晩からじっくり読んでいこうと思います。